建築ノート

デル株式会社


デル株式会社




楽天市場


楽天ブックス

EPCOT NET No,32 【 第1回 】 『なぜバブルプラニングは難しいか?』(A氏への手紙) 2003年2月


大学での設計課題では、課題を与えられたら、最初にバブルプラニング(用語として定着したものかどうかは知りませんが、各空間の泡ぶくを膨らませたり凋ませたりしながら、空間を作っていく手法)をやれと指導する場合が多いと思います。各空間の泡ぶくを膨らませたり凋ませたりしながら、全体構成を作っていく手法です。

しかし教員時代、これをやらせても、学生がうまくやってくれたことはほとんどありませんでした。ある程度の研鑽を積んだ人が描くバブルには、基本的な寸法関係と、ある程度のアクティビティが想定されているので、容易に平面構成へと結びつきます。

原因はそこでしょう。基本的な寸法関係の知識があり、アクティビティの想定ができていることが、バブルを使える条件になります。その条件が整わない場合、できるのはせいぜい空間構成のダイヤグラム(各空間のリンク図)作成までです。

大学の授業で、ライトの3つの住宅の平面図を見せ、それの空間構成ダイヤグラムを書かせていました。これは意外と簡単で、大半の学生は全体形状は異なっていても部屋と部屋の関係が同じであることに気づきました。重要なのは空間構成ダイヤグラムは空間と空間のリンクを示した図式であり寸法要素を持たないのに対し、バブルプラニングはバブルという可変要素を使うからあくまでも寸法ベースの発想である点です。

空間構成ダイヤグラムができたら、バブルプラニングと呼ばれるようなプロセスを経由しなくても大丈夫です。たんに動作寸法や家具サイズを多少意識して壁や開口を配置していけば、建物と呼ばれるものはできあがります。バブルプラニングがなくても、空間構成ダイヤグラム+動作空間サイズ+オブジェクトサイズで平面図は描けるでしょう。動作空間のボリュームも、家具調度設備などのオブジェクトサイズも、ほとんど決まりきった数値があります。

ですから最小規模になるようなプラニングを行ったとすれば、ダイヤグラムの決定から、ただちに平面図へと入っていけます。最小規模でない場合は、すなわち必要とされる動作(むしろアクティビティと呼ぶべき)が増えた場合は、単純化して言えば、挿入したいアクティビティに対応するアクティビティ空間の分だけ、空間を増量してやればよいのです。

バブルプラニングは空間領域のサイズを変えられますがが、行為者としての人体の形状と寸法を考えれば可変である幅はさほど大きくはないでしょう。何であれ、パラメータが増えると解決は困難になりますが、バブルプラニングは無用なパラメータを増加させるだけの結果に陥る危険もあると思います(とくに初心者の場合)。逆に、バブルプラニング的な分析を行うことは、分析プロセスではとても役立つ手法です。

分析的な行為と創造的な行為は、元来、表裏一体となって進んでいくべきものですが、手法まで同じくしなければならないかというと、全くそんなことはないでしょう。

*************
上記は、一年ほど前に知人に送ったメールからの抜粋である。当時、なぜバブルプラニングに楯突いてみたかというと、親友の家を設計するにあたって、アクティビティだけから空間を組み上げようとしていたからだ。このとき私が書いたことで、もっとも重要なのは、創造的行為と分析的行為を行うためには、それぞれ別の手法なり方法論があってしかるべきだという点だと思う。

建築は芸術ではない。建築家は、芸術家としての創造力と、批評家としての冷徹な観察力を同時に持ち合わせなければならない、非常に両義的な職能である。さて「アクティビティ」という言葉について言えば、私とほぼ同期のシーラカンスが「アクティビティ」を冠した本を出版している。私たちの世代の共通の問題意識なのだろう。アクティビティのデザインが浸透すれば、まちは住みやすくなるはず。